ささやかな日常の記録

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【備考】母さんの傷~「仁」と「マニトウ」

「母さんの傷」はキャロラインの小さな傷が大きな波紋を広げていくストーリーだが、原題A Matter Of Faithからも分かる通り、信仰の物語でもある。

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キャロラインの決死の行為をベイカー先生は神業だと称え、オルデン牧師は神の思し召しだと言う。その結論に至るまでにドラマは小さな異変を積み重ねていく。

それに気づく機会はその度にあったが、残念ながら見落とされていき、最悪の事態に陥ってしまう。しかし、それを救ったのが聖書に書かれていたcut it offという言葉だったということだ。

新型コロナの影響で新作のドラマが制作できず、過去のドラマが再放送されているが、TBSで2009年10月から放送された「JIN-仁」もそんな一本である。

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「神は乗り越えられる試練しか与えない」と言うセリフが印象的だが、西洋医学では命を救うためには躊躇なく患部を切り落とす。そんな医学と信仰の問題も興味深いところである。

江戸時代の人が現代の治療を受けたら、それこそ神業だと思うことだろう。そんな神業を持った医師にも救えない命がある。そこに葛藤がある。

ドラマではキャロラインの強い精神力と信仰心が窮地を救うが、現実ではなかなか思い通りにはいかないことが多い。それでも、ちょっとした異変を見逃さないようにすることはできる。そんな気付きの大切さをドラマは教えてくれる。

池で遊んでいた所にオルデンが約束通りにやって来るが、キャロラインはいない。オルデンは大丈夫と言うが、チャールズは嫌な予感がして馬車を飛ばして帰ることになる。ここでようやくチャールズが異変に気付くことになる。

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そんなドラマの中でも、印象的なのはカレン・グラッスルの一人芝居だろう。家に一人残されて見えないものと闘う姿は恐ろしくも美しい。コメディだったら映画「ホーム・アローン」だし、サスペンスだったら「パニック・ルーム」あたりを思い出す。 

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 しかし、以前の記事でも書いたように当時のホラー映画の影響が見てとれるのが面白い。目のクローズアップは不安な精神状態を強烈に印象付け、キャロラインの視点でその不安が増幅されていく。見えない外敵である泥棒に怯え、腫れあがっていく自らの足に潜む菌に恐怖する。それを取り除かなければ命がないという究極の選択に迫られることになる。

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このキャロラインの足を首の腫瘍にすると映画「マニトウ」になる。中学3年の夏休みに観た映画で今でも忘れられない。その腫瘍を切除しようとすると、なぜか宇宙空間が出現してしまうという奇想天外なホラー映画であるが、「JIN-仁」も胎児のような脳腫瘍があるという設定だけ見れば、同じようなものかもしれない。

マニトウ(The Manitou)とは先住民に信じられている超自然力の観念のことで、シーズン4の「自由への旅」でも似たようなことが描かれる。VFXを担当したのがリチャード・エドランドで「ポルターガイスト」でも先住民による超常現象を見事に映像化している。

マニトウ

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同時上映は「恐怖の報酬」でこちらも「長く危険な道」の回で思い出してしまった。この月には他にも「死亡遊戯」「コンボイ」そして「スター・ウォーズ」を観ており、忘れられない記憶になっている。

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