アメリカのサイトで「大草原」の最高のエピソードとして1位と2位になっているのがシーズン4の「メアリーの悩み」と「先生になったメアリー」である。「メアリーの悩み」についてはすでに書いたが、今回4Kで「先生になったメアリー」を見て、色々と面白かった。
どちらもメアリーが主役みたいなエピソードであるが、ストーリーも似ている。「メアリーの悩み」ではウォルナット・グローブに便利屋の男がやって来て波紋が広がるが、「先生になったメアリー」ではメアリーがその立場になってしまう。
臨時教員としてオルデン牧師の教区である村に赴任することになり、その村に波紋が広がっていく。原題のWhisper Countryからも分かるように、自由な発言ができずに、ささやくようにしか話せない閉塞的な村が舞台となる。その原因がピールという女性で、魔女的な存在として村人を支配していたということである。
その影響力を維持するためには進歩的な学問は邪魔になる訳で、学校の先生であるメアリーを敵視することになる。当然、ピールの影響下にある村人もメアリーにはなかなか心を開かない。下宿することになった家でも同じで、メアリーと同じように息が詰まるようだった。そんな中で少しずつ母親と娘が心を開いていく姿は印象的だった。
こうした閉鎖的な村は映画でもよく描かれる。大好きな映画「刑事ジョン・ブック/目撃者」でのアーミッシュの村を思い出した。その他にもシャマラン監督の「ヴィレッジ」なんかもそうだし、「獄門島」などの横溝映画にも当てはまるような気がする。
現代においてもカルト的な宗教集団は皆そうである。それだけに今でも身近な問題でもある。DVDで見た時は映像が暗くて、ただただ重苦しい印象だったが、4Kで見ると陰影がはっきりとして美しくもあり、印象が大分変わってしまった。
昔の吹替では等身大の弱々しいメアリーという感じであったが、新しい吹替では確固たる意志を持った力強いメアリーに変わっていた。それぞれ好みはあるとは思うが、これはこれで悪くはなかった。
それでも先生とはいっても生徒とはそんなに年齢差がない中で教えるのは大変なことだったことは容易に想像がつく。特に年頃の男子に対しては妙な誤解をされてしまいがちである。それでメアリーもふしだらだと糾弾されてしまい、耐えられずに家へ逃げ帰ってしまう。
その絶望から立ち直って再びピールと対決する姿は、まるで西部劇である。アメリカで人気があるのはこうしたところが大きいのだろう。
それぞれの信仰(十戒)の考え方をぶつけ合う姿は、言葉による決闘である。大統領選を見ても、こうしたディベートはアメリカならではのもので圧倒させられてしまう。日本ではなかなか見られない光景である。
それにしてもメアリーの気迫は凄かった。ストーリーとしては、「どのようにメアリーが村から逃げ帰ったのか」「先生になる手順が安易すぎ」「チャールズも簡単に認めすぎ」といった難はあるが、シーズンの最終回前にメアリーが先生になるエピソードを描きたかったのは良く分かる。
今日が誕生日だったマイケル・ランドンの演出もメアリーを魅力的に撮ることに徹していたようである。
Whisper Countryといえば、このブログなどは田舎者のささやかなささやきみたいなものである。ワムのケアレス・ウイスパーも好きな歌である。