ささやかな日常の記録

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わたしの「若草物語」

昨年、コロナ禍の中で公開された映画「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」をようやく見ることができた。

これまで「若草物語」の映画は1949年と1994年に制作されたものを見ているが、今回のは時制をシャッフルさせて、いかにも現代的な映画になっており、作家としてのジョーに焦点を絞っていたのが印象的だった。

ストーリーはよく知られた物語だけに、ネタバレもなにもないと思うが、どこをクライマックスにするかで印象も変わってくる。

前の2作はジョーとフリードリヒの再会で終わっていたが、今回はその少し先まで描いている。本が出版されることは分かっているが、その工程が描かれてワクワクする。著作権を巡っての攻防も面白く、自著に対する深い思いが伝わってくる。

個人的にはこの構成は「大草原の小さな家」を映画化するのなら、こんな感じかなって思っていただけに納得である。リブートが実現するなら作家としてのローラに焦点を当てて欲しいものである。

そのドラマ「大草原」との関連で1949年版の映画は記事にしているが、この3作の中ではもっともクラシカルでお気に入りである。しかし、演じた俳優たちにもっとも馴染みがあるのは映画を一番見ていた時期に公開された1994年版である。

ジョーを演じたウィノナ・ライダーは映画「シザー・ハンズ」で忘れられない存在になった。ベスを演じたクレア・デインズは「ロミオ+ジュリエット」があった。エイミーの幼少期を演じたキルスティン・ダンストサム・ライミ版「スパイダーマン」のヒロインだし、サマンサ・マシスは「ブロークン・アロー」のヒロインになった。メグを演じたトリニ・アルバラードは「さまよう魂たち」に出演した。

それぞれ当時、映画館で観て夢中になった作品である。そこにスーザン・サランドンクリスチャン・ベール、エリック・ストルツ、ガブリエル・バーンが加わるのだから堪らない。

若草物語 (字幕版)

若草物語 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

それに対して最新作は当然のことながら馴染みの顔は少ないが、それが新鮮でもあった。その中でメグを演じたエマ・ワトソンはさすがに「ハリー・ポッター」シリーズがあるから別格である。ディズニーの「美女と野獣」の実写版も見ているが、このメグ役もなかなか良かった。吹替は清水理沙で結婚相手がジョンということで、ちょっと「大草原」のメアリーに重なってしまった。そのメアリーも4Kでの放送では結婚したばかりであるが、映画での結婚式のシーンも良かった。


エマ・ワトソンの花嫁姿!『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』予告編

ジョーを演じたシアーシャ・ローナンは「さまよう魂たち」も監督したピーター・ジャクソンの「ラブリー・ボーン」に出演していたが、今回の颯爽としたジョーにピッタリでアカデミー主演女優賞にノミネート。エイミーを演じたフローレンス・ピューもホラー映画の「ミッドナイト」に出演しているが、今回の演技でアカデミー助演女優賞にノミネートされている。ベス役のエリザ・スカンレンと共に今後の活躍が楽しみである。

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麦わら帽子を含めてファッションも魅力的

そして今回マーチ伯母さんを演じたのがアカデミー賞の常連であるメリル・ストリープ。先日「マディソン郡の橋」を見直したばかりであるが、平凡な主婦からサッチャー首相まで見事に演じ分ける力量は当代随一。1978年のドラマ「ホロコースト」と映画「ディア・ハンター」を観て以来、忘れられない存在になった。そんなメリル演じるマーチ伯母さんがジョーとエイミーに話す結婚観によって二人の個性が際立つあたりは流石である。

シェイプ・オブ・ウォーター」で2度目のアカデミー作曲賞を受賞したアレクサンドル・デスプラの劇伴も良かったが、フリードリヒが弾く「悲愴」の調べが心に残った。


Alexandre Desplat - Little Women (From "Little Women" Soundtrack)


Playing Beethoven's Pathétique / Painting Jo March (Saoirse Ronan) from Little Women

ちなみに今月の15日(月)13時よりBSプレミアムで1949年版の「若草物語」が放送予定なので、見てない人は必見である。