このところ暖かい日が続いていたが、今朝は氷点下の冷え込みになった。まだまだ油断はできない。そのため濃霧も発生し、車を運転するのも緊張してしまう。
だいぶ雪溶けは進んだが、近くの河原にはまだまだ多くの雪が残っている。その景色を見ていたら、あるドラマのシーンが脳裏に浮かんだ。
奉公に出されるために真冬の最上川で別れる少女と母親に、その姿を隠れて見送る父親・・・。そのドラマ「おしん」を書いた橋田壽賀子が95歳で亡くなった。
川は映画やドラマで最高の舞台になる。
先日も地元を舞台にした「しなの川」という1973年に公開された野村芳太郎監督の映画を見たばかり。脚本はジェームス三木で、由美かおるが演じたヒロインが朝ドラ「澪つくし」の桜田淳子が演じた役柄みたいで興味深かった。音楽は冨田勲で、翌年にはあの「ノストラダムスの大予言」を担当する。
ドラマでも川そのものをテーマにした「川、いつか海へ 6つの愛の物語」が印象に残っているが、野沢尚と三谷幸喜と共に脚本を担当した倉本聰が手掛けた「川は泣いてる」も忘れられない。
ドラマ「大草原」でも、いきなりパイロット版の前半で川のシーンが登場する。幌馬車でカンザスを目指している途中で川に遮られ、やっとの思いで渡りきるが、番犬のジャックが流されてしまうという印象的なシーンがあった。
その他にもシーズン2の「キャンプ」ではローラとネリーが川に流されて危機一髪というスリリングなシーンもあった。まだ橋が整備されていない時代には、川を渡ることは命懸けだったということである。
先日BS4Kで放送されたシーズン5の「心をつなぐ旅」でも増水した川に行く手を遮られるエピソードが描かれた。渡るのは盲学校の生徒たちで、川にロープを張って運ぶという大掛かりなもの。
しかし、これを実際に撮影するのは大変で、尺の関係もあってカット。唯一、オルソン夫人がずぶ濡れになる笑えるシーンだけが描かれたが、できればメアリーが渡るところも見たかった。
それと同時に、アダムの川に対するトラウマも描かれるが、ここも実際に渡るシーンはカットされ、渡った後でのメアリーとの会話から、その過去が語られることになる。
このようにスリリングなシーンは実際には描かれなかったが、ウイノカからウォルナット・グローブまでの苦難の旅路は十分に想像することはできた。
個人的にはシーズン3の「祈りの森」のローラのようにメアリーが歩き続けるシーンをもっと見たかった。歩きなれたメアリーがニコニコしながら、都会育ちで歩きなれていないアダムを励ますところが目に浮かぶ。
実際、アダムの告白を受け、励ましながらも涙ぐむメアリーの表情が印象的だった。4Kの映像では暗闇の中でも、涙が流れた跡がはっきりと分かる。
ただ、このエピソードではオルソン夫人がこの旅を通してどのように変わったかを描くことがメインだったようである。前編でジョー・ケイガンを教会に呼ぶことを反対していた夫人が、黒人少年の気持ちを知って涙ぐむシーンがハイライトである。ジョーと夫人がどうなったかも見所の一つである。
DVDのタイトルは「心を結ぶ旅」だったが、放送では「心をつなぐ旅」になっていた。個人的には結ぶで良いような気がするが、つなぐに変えたということは、こちらが意味としては正しいのだろう。
オルソン夫人と黒人少年、メアリーとアダム、ジョーとへスター・スーといった人々の心と心を結んだ旅が、盲学校の生徒とウォルナット・グローブの人々とを結びつけたということ。馬車に結ばれたロープを握りしめて川を渡るということも、危機を乗り越えて心をつなぐことだったのかもしれない。
こうしてハンソンの家が盲学校になった訳だが、この家こそ「おばけ屋敷」であり「未亡人の館」であり「メアリーが人質になった家」である。この家がやがて大きな悲劇の舞台になるのを知ってしまった今では、そこに笑顔のアリスやメアリーがいるだけで胸が痛くなってしまうのも困ったものである。